遺言書作成の注意点

桜の季節を迎え、新たな出発の春。この季節に家族の将来について考えてみませんか? 相続に関しては、「遺言書があれば安心」ではありますが、その落とし穴についてお話しします。

1 誤解と注意点

「遺言書さえあれば、相続で揉めることはない」

このように考えている方は少なくありません。確かに、遺言書は被相続人の最終意思を示す重要な書類であり、法的効力を持ちます。しかし、遺言書の存在だけで相続争いが完全に防止できるわけではありません。むしろ、不適切な遺言書が新たな争いの火種になることも珍しくないため、その注意点についてお話します。

2 遺言書があっても争いが起きる主なケース

(1) 形式不備による無効

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言など複数の形式があり、それぞれに厳格な要件があります。例えば自筆証書遺言の場合、日付や署名がない、自筆すべき部分がワープロで作成されているなどの形式不備で無効となることがあります。このような形式不備があると、せっかく遺言書を残しても法的効力を持たず、結局法定相続へと戻ってしまいます。

(2) 遺留分侵害

遺言の内容は無制限ではありません。兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限保障された相続分があります。遺言で「長男にすべての財産を相続させる」と書いても、他の子どもや配偶者は遺留分侵害額請求ができるため、結果的に争いになることがあります。

(3) 内容の不明確さ

「家は長男に」という記載があっても、複数の不動産を所有している場合、自宅の建物だけなのか、自宅の敷地の土地も含むのかなどどの物件を指すのか不明確なケースがあります。また、「お世話になった次男に多めに相続させる」といった曖昧な表現も争いの原因になります。

(4) 相続財産の変動

遺言作成時から相続開始時までに財産状況が大きく変わることがあります。「預金1,000万円を長女に」と指定していても、相続時に預金が500万円しかなければ、残りをどうするかで争いになる可能性があります。

(5) 遺言者の意思能力への疑義

認知症などにより判断能力が低下した状態で作成された遺言書は、後に「本人の真意ではない」と争われるリスクがあります。特に高齢になってから作成された遺言や、内容が急に変更された場合などは注意が必要です。

3 争いを防ぐための遺言書作成のポイント

(1) 法的要件を満たす形式で作成する

自信がない場合は、弁護士の関与の下で自筆証書遺言を作成するか、公正証書遺言で作成することが安心です。

(2) 遺留分に配慮する

法定相続人の遺留分を考慮するか、生前に遺留分放棄の手続きをしてもらうことを検討しましょう。なお、中小企業の事業承継は別途特例があります。

(3) 財産と受取人を明確に特定する

「〇〇銀行△△支店の普通預金口座番号××××」、「旭川市○○番地○号の建物」など具体的に記載します。

(4) 理由も記載する

なぜその分配にしたのかの理由を記載することで、相続人の理解を得やすくなります。これは、遺留分侵害額請求を思いとどまってもらう観点からも有効です。

(5) 定期的に見直す

財産状況や家族関係の変化に応じて、定期的に内容を更新しましょう。また、遺言書を新しく作成した場合、それまでの遺言書と矛盾する場合には、新しいものが優先されます。

(6) 専門家に相談する

法的な問題だけでなく、税金面や家族心理の観点からも最適な遺言書作成のアドバイスを受けることが重要です。

4 まとめ

遺言書は相続対策の重要なツールですが、それだけで争いを完全に防ぐことはできません。むしろ、適切な知識と準備がなければ、新たな争いの原因になることもあります。

春は新しい始まりの季節。この機会に、ご自身や大切な家族の相続対策を見直してみませんか?今後も相続に関して解説していく予定です。

大箸法律事務所では、相続に関する相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

年末年始休業のお知らせ

本年は、大変お世話になりました。

当事務所は、2024年12月28日(土)~2025年1月5日(日)まで年末年始休業とさせて頂きます。

年末年始休業期間中も、メール、お問い合わせフォーム、郵便及びFAXの受け付けは行っておりますが、ご対応は2025年1月6日以降となります。お急ぎの方にはご迷惑をおかけいたしますが、御了承いただけますよう、よろしくお願いします。

皆様、良いお年をお迎えください。

また、来年も当事務所を、どうぞよろしくお願いいたします。

冬の北海道、交通事故と補償問題のポイント

厳しい寒さが続く北海道では、冬道での運転は特に注意が必要です。雪や凍結によるスリップ事故など、交通事故のリスクは高まります。今回は、冬の交通事故と、万が一事故に遭ってしまった際の補償問題について説明します。 

冬の交通事故の特徴 

スリップ事故: 雪道や凍結路面でのスリップは、最も多い事故原因の一つです。

視界不良: 雪や霧による視界不良は、衝突事故の原因となります。

歩行者の転倒: 歩道が凍結している場合は、歩行者が転倒し、怪我をすることもあります。 

交通事故に遭ってしまった場合 

万が一、交通事故に遭ってしまった場合は、以下の点に注意しましょう。 

安全確保: まずは、二次的な事故を防ぐために、車を安全な場所に移動させ、ハザードランプを点灯させましょう。高速道路では、三角板などを設置し、二次衝突を防止する措置をとり、乗員は安全な場所に退避することも不可欠です。

警察への通報: 警察に事故の状況を通報しましょう。単独事故でガードレールなどを壊した場合でも警察への通報を必ずしましょう。

相手の情報収集: 相手の運転免許証、車のナンバー、保険会社などの情報を収集しておきましょう。

目撃者の確保: 事故の状況を目撃した人がいれば、連絡先を交換しておきましょう。

写真を撮る: 車の損傷状況や現場の様子を安全に注意して写真に収めておきましょう。

病院へ行く: 怪我をした場合は、すぐに病院で治療を受けましょう。また、意識がないなど重症であれば、直ちに救急への通報をしましょう。 

保険金請求について 

交通事故による損害賠償は、加害者の自動車保険から支払われることが一般的です。しかし、交通事故による保険金はどのような損害に支払われるのかなど複雑で専門的な知識が必要な場合があります。 

また、自損事故の場合など相手方がいない事故や対向車線はみだしなどの御自身の責任が大きな事故であった場合でも、乗っていた車の人身傷害保険などから治療費などの保険金が支払われる可能性があります。 

どのような保険会社から支払われるか、また相手方保険会社との交渉には、専門知識が必要となるケースもあるため、早めに一度弁護士に相談することをおすすめします。 

冬の交通事故を防ぐために 

冬タイヤの装着: 雪道や凍結路面では、冬タイヤの装着が必須です。

安全運転: 急加速・急ブレーキ・急ハンドルは避け、十分な車間距離を保ちましょう。

路面の状況に注意: 冬のはじめや終わりなど温度変化が激しいときには、路面の状況に応じて、速度を調整しましょう。

視界を確保: ヘッドライトを適切に使い、ワイパーをこまめに動かしましょう。 

新年を迎える前に見直したい借金問題とその解決法

年末年始は、日常生活の慌ただしさが一段と増す時期です。しかし、この時期は日常の忙しさから目を背けていた借金問題に目を向ける良い機会でもあります。借金や返済の悩みを年内に見直し、新年を迎えるにあたって心の重荷を少しでも軽くするために、借金整理や法的な解決策について解説します。

1 借金の現状把握と整理

借金問題に対処する第一歩は、現状をしっかり把握することです。どのくらいの金額を借りているのか、借入先が複数あるのか、又返済が滞っているのか、現在の収入で返せる金額がいくらかを明確にすることで、適切な対応を選べるようになります。特に複数の借入先がある場合、金利とともに元金も返済額が増えてしまうケースが多く、無理なく返済していくための方法を考えることが大切です。

2 債務整理の選択肢

借金問題に対する法的な解決策として、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」という3つの債務整理の方法があります。それぞれの特徴を理解し、自分に最も適した方法を選びましょう。

  • 任意整理
    借入先と話し合い、利息カットや返済計画の見直しを行います。話し合いによるため比較的柔軟な対応が可能であり、返済負担を軽減する方法として広く利用されています。一方で、元金の減額には借入先が応じない場合もあるほか、利息カットも借入先次第で応じてもらえないことがあるため、債務総額は減らないことが多くあります。
  • 個人再生
    裁判所を通じて借金の元本を圧縮し、利息もカットして分割して返済していく方法です。主に住宅ローンがある方が利用されますが、安定した収入があることが必要であり、特定の資産を保持しつつ借金を減額できます。
  • 自己破産
    借金が全て免除される手続きですが、資産が処分され、一定期間の職業制限も伴います。返済が難しい場合の最後の手段として考えられる方法です。また、浪費やギャンブルなどの一定の理由によっては借金が免除されないこともあります。

3 債務整理の手続きと流れ

債務整理を検討する場合、まずは専門家への相談をおすすめします。弁護士が間に入って債権者との交渉や裁判所の手続をするため、借金問題を一人で抱え込むよりもスムーズに解決が図れます。相談時には、借金の詳細や収入状況などをできるだけ詳しく伝えることで、最適な解決策を提案してもらいやすくなります。

4 借金整理を考えるタイミング

借金問題の解決には早めの対応が肝心です。返済が苦しくなり始めたら無理に返済を続けるのではなく、弁護士への相談や債務整理の検討を早めに行いましょう。特に年末年始の支出が増えるこの時期に、計画的に借金整理を進めることで、余計な利息負担を抑え、家計を安定させることが可能です。

5 新年に向けた家計管理の見直し

債務整理を行うことで借金の負担が軽くなった後も、再び借金問題に陥らないために家計管理を見直しましょう。家計簿をつけるなどして収入と支出のバランスを再確認し、無理のない返済計画や生活設計を立てることが大切です。必要に応じて節約の工夫や収入増加の手段を検討し、将来的に安定した生活を送れるよう努めましょう。

6 終わりに

新年を迎える前に借金問題を解決することで、心の負担を軽減し、より清々しい気持ちで新たな年をスタートできます。悩みを抱えている方は、早めの対策を取ることが安心への第一歩です。専門家のサポートを受けながら、自分に合った解決策を見つけて、健全な生活を取り戻しましょう。